極東最前線

Friday, September 15, 2006

孤高

嗚呼、全くもって此の世は平安、大河が凍るなんてこたぁござあせんよ。
なんてぇか目なんてもんは、その目が潰されるまで、
其処に目があったなんて気付きもしねぇもんでござあすよ。
此の世は所詮此の世、浮世たぁよく言ったもんで、どうせ儚い世の中でさあ。
できりゃあ浮かれて暮らしてぇってなもんでさあよ。

浮世男に浮世傘
浮き足だちゃあ立ちすくみ
夜の帷の色も微かに

なんてぇくっせえ歌が身に染みるじゃあござあせんか。
酒ばっかし呑んでたって何も変わりゃあしやせんよ。
徳利一本で俗世の怨恨も忘れられるってんで、
こんな都合のよろしい話はござあせんよ。

鞠躬如として何を辛ぇ事があるってんだい。
己の身に覚えのある、辛ぇ話は聞きたかねぇわなぁ。
なんてぇか耳なんてもんは、辛ぇ話でも聞かねぇ限り、
其処に耳があったなんて気付きもしねぇもんだ。

空蝉、戯れ言、聞こゆ存ぜぬ
水面の水馬、死ぬるも静か
酒の徳利ぶんだくり
茶碗も箸も分別つかず
表にゃ努めぬ男の死骸
堕落散々、跼天蹐地
ただ散り際の、耳の削ぐ音

べんべん。てなもんでさあ。
現し身、肩身のせめぇったりゃねぇよ。
花を賞するに慎みて離披に至る勿れ、か〜、まいっちまうよ。
何が悲しくて、篭を途中で降りるような真似をせにゃならん。
遠巻きに見とってくんな。
近寄んじゃあねぇよ。
浅葱の咲く頃にゃあ、ぜぇんぶ終わってら。

そうでぇ旦那。
ちょいとばっかし耳を貸してくんな。
靫の底にも届いちまいそうな長ぇ話になりまっけど、ちょいとの間は我慢でござあすよ。

呉服問屋の三代目、清吉の話、旦那も重々知ってのとおり、
ちょいと頭のほうが弱いんでさあ。
反物の勘定も碌にできねぇ盆暗でござあして、
先代の長吉が死んでからったら、こいつがひでぇ有様で、
反物売っても金にならねぇ、客にゃあ悪態は衝くわでどうしようもない奴なんでさあ。
のくせして金にはめっぽう五月蠅ぇってんだから、これまた質が悪い。
金がねぇのは物取りが入ってるに違ぇねぇなんてほざいてやがったりして、
そこら中の扉っちゅう扉に錠前やら閂やらあしらえてんでさあ。
鼠一匹入らねぇほど頑丈に戸締まりしやがるんで、巷じゃちょっとした話題になってるとかで。
あっしみてぇなせこい物取りなんかにゃ到底入ることができねぇなんて言いふらしてるそうで。
そんな清吉んとこに、これまたでっけぇ蔵があんのは旦那も知ってのとおり。
ここにもまた閂がかかってんですけどね、流石に内側に人が居るわけにもいかねぇってんで、
その閂、外側についてんでさあ。
頭の弱い清吉のことでさあ。閂さえかかってりゃあ安心なんでさあ。
閂ずらしゃあ誰でも入れるって、そらぁありがてぇ蔵なんでさあよ。

そこでだ、旦那。
あっし、ここらでいっちょ清吉んとこの蔵ん中、きれいさっぱり片づけてやろうって魂胆でさあ。
旦那にも乗ってもらいてぇってことでござあすな。
なぁに、一刻もかかりはしねぇって。
何せ閂ずらして中のもんかっさらうだけでさあ。

そうでぇ旦那。そうこなくっちゃあ男が廃るってもんでさあ。
そうとなったら話は早ぇ。
風呂に水でも張って、湯加減いい塩梅になるころにゃあ、あっしら街有数の銭持ちでがんすよ。

べんべん。てなもんで、兎にも角にも銭銭銭。
街有数たあ聞いてあきれる。
この盗人、名前を籐六、街の女郎の色仕掛けにゃあめっぽう弱い。
おまけに金まで詐欺られる、根っからのお人好し。
いやいやお人好しなんた上等なもんじゃあねぇ。
平たく言やあ、ただの莫迦。
騙されてるなんた微塵も思っちゃいないんだから、盗人なんざ向かねぇ商売だ。

さあさあさあってんでやってきたのは清吉の呉服問屋。
蔵はどこだと旦那が聞きゃあ、藤六。

へえへえ、旦那。この呉服問屋、裏手にでっけぇ門構えがありやしてね、
その門くぐってまぁっすぐ、突き当たりに蔵が仏頂面ぶら下げて佇んでさあ。
何でも其の裏門、護衛の人間どころか錠すらもかかってねえ、そいつぁ物騒な門構えなんでござあすよ。
誰でも勝手に入れる、正に勝手口なんてよく言ったもんでさあ。
南蛮人に言わせりゃ、うえるかむ・まい・ほーむ、てなもんでさあよ。
切支丹の連れが言ってやしてね。
南蛮じゃあ、いらっしゃいみてえな意味らしいんでさあ。
旦那もほら、うえるかむ・まい・ほーむ、響きがまたキンキンしやがるんでさあ、
ちょっと気に入っちまって、ちょくちょっく使うんでさあ。
こういうのは「みーはー」ちうらしいんでさあ。
あっしは「みーはー」らしいんでさあよ。

べんべん。よっ。さあこの藤六。
悪い癖が始まっちまったら誰も手が付けられねぇ、なんてこたぁ旦那がよぉく知ってのとおりで。
自分の話に酔いしれちまって、あさっての方向見ながら恍惚の表情で延々と話し出しちまう。
やれやれまいった、旦那も呆れ顔だ。
でっけえ門構えの前で、何長々とくっちゃべってやがんだ。
旦那は藤六おいて一人で行こうと門に手をかけるまではよかったが、
この門、押しても引いてもビクともしねぇ。
嗚呼、また藤六の早とちり、若しくはこいつ、また誰かに担がれたな。莫迦野郎。
この落とし前はきっちり藤六に取って貰わにゃならんなと思うが、
藤六、まだ一人で伴天連の言葉でべらべら独り言。
こりゃあ終わるまで放っておこう、旦那も退散決め込んで、酒でも呑もうとその場を去った。

てな話で、盛り上がってた藤六。
気付けば周りにゃあ、旦那がいねぇってんで動揺しちまって、
その動揺が隠しきれねぇってんで、取り敢えず着物を全部脱いだ。
褌までもはずしちまって、それこそ大事な逸物までもお天とさんに曝しちまったもんだからこりゃあ一大事。
すっぽんぽんで旦那がいねぇ旦那がいねぇって踊っていやがるもんだから、なんだなんだってなもんで来るわ来るわの人だかり。
何十人もの街人に囲まれて、それでも藤六は踊り止まずに、旦那はどこだ旦那はどこだ。
ぶらんぶらん、ぶらんぶらん。
周りで見てる町娘にゃあ笑われたり疎まれたりで、だけどもまさかこいつが盗人だなんてだぁれも考えもしねぇって魂胆なのは、後ろのほうで高見の見物の旦那だ。
この旦那がまた頭の切れる優等生。
まぁ優等生ったって盗人にゃあ違ぇねぇんだが、機転が利くってぇか、要領がいいってぇか。
清吉の屋敷の前でこんだけ騒いでりゃあ、今に清吉も飛び出してくる。
そん時、錠の開いた門から、がら空きの屋敷の中にあっさり入って、蔵までまっしぐらってぇ魂胆だ。
何があるか分かりゃあしねえ。用心にこしたこっちゃねぇ。
門番がいねえ清吉の屋敷たあ言うが、また藤六得意の勘違いってぇこともある。
傭兵なんていねぇとは思うが、いきなり斬られちゃあたまったもんじゃねぇ。

てな要領で帯紐締め直しながら待ってたって訳。
しかしこれが困った事に、待てど暮らせど清吉どころか誰一人も屋敷から出てきやしねぇ。
これはどうしたってんで旦那も困っちまって、塀の前で飛び跳ねて、中の様子を垣間見ようと試みたんだが、塀がやったら高いもんだからいい加減しんどくなってきたって訳だ。

いやあ参った参った。参るわ。
こう言うのを「まいれーじが溜まる」ってんだ。
いけねぇいけねぇ。どっかの唐変木の藤六みてぇになっちまったな、なんて言ってんのは旦那なわけだが、
くせぇくせぇと辺りを見りゃあ、なんてこたぁない、死体の山、山、山。
町人がそこいらでごろんごろん寝っ転がってるもんだから、何かの祟りか将又流行病かってなこと考えてりゃ世話ねぇやってんで、そのままおろおろと辺りを見回して見りゃあ、なんだい、藤六も死んでるってんだからこりゃあ一大事だ。
蔵破りなんて不貞事目論んでたもんだから、こらぁバチが当たったに違ぇねぇ。
しかも藤六の奴、上半身と下半身がちぎれてやがったりなんかしてるもんで、血がどぼどぼ流れて死にたてホヤホヤってのは一目瞭然。
顔も真っ青じゃあねぇか。てぇへんだぁ。

べんべん。とまぁこんな時、運悪く清吉と屋敷の人間が挙って飛び出して来ては、黄色い声の出し合いへし合い。
やれ合戦がおっぱじまったたら、やれ鎌鼬が表れたやら、言いてぇほうだい言っては、揚げ句失神してまた静かになった。
一人二人と倒れては、清吉もいつの間にか泡吹いて倒れてる始末。
死んでんのか生きてんのかもわからねぇ具合に足下に寝っ転がっていやがんだ。
そんでまた立ってんのは旦那一人になっちまったもんだから、旦那もしめたもんだ。
今なら屋敷で蔵でも何でも空け放題ってぇ訳だ。

ってぇとこに運悪く岡っ引きでも現れりゃあ、この小咄もオチがつくってぇもんだが、この旦那、すんなり蔵まで入って、金銀財宝根こそぎかっぱらったてんだから、こらぁ上等な盗人ってことになる。
それから旦那、嫁ももらって、足も洗って、小さな宿屋の商売始めて大成功。
めでたしめでたし。
お後がよろしいようで。

べんべんべん。

落ち無し。

なんてこたないよくある話。
他人を笑わす過程には、幾つもの障害が待ち受けてるわけでござあすが、一つの発言に対して、万人が同じ感覚で笑うっちゅう訳にゃあいかねぇなんてのは皆さんよくご存じのとおり。
笑う神ありゃ怒る神ありってぇことだ。

あっしね、最近になってようやっと、人の心の美しさっちゅうもんが見えるようになってね。
今まで考えもしなかったような事を考えたりもしてしまう訳でさあよ。
気付きたくねぇから逃げてたってぇのもあらぁ。
気付くと何かと面倒くせぇことになんじゃねぇか、なんてな。
勿論、本当に気付いてない事も多々あるわけだが。
自分自身の弱ぇとこなんて、曝したくもねぇし、ましてやそれを指摘されたりなんかすりゃあ最悪だ、ってなもんだ。
あっしってね、おもしろかったら結構なんでもアリだろ?って思っちまう質でさあ。
曝しておもしろいってんなら平気で曝すわ。
だからこのBlogってぇ奴にも赤裸々に自分の事を謳ったりするってぇもんだ。
それが故に何かと苦労したりもしてんだ。
誰にも信じてもらえなかったり、誰かを誤った感覚へ導いちまったり、勇み足踏ませちまったりな。
けどそれを改める気なんざさらさらなくってな、自ずから荊の道を進もうって魂胆だな。
全員が同じ感覚で笑い合える未来を模索してるっちゅうわけだ。

そして感覚的精神の統一した社会の建設。
諄いようだが、これが目下の目標だ。

人の美しさ、伴天連の言葉を借りりゃあ「ぴゅあ」ってぇやつだ。
本当に美しいと思うなぁ。ありゃあ。
自分には到底ねぇ感覚だわ…。羨ましいね。

あっしの教典は何かしらん、てなことを考えて一番最初に出てくんのは「どっきりカメラ」なわけでさあ。
普通にしているところに、突拍子もないことが起き、感情は流れ流され、その後本質を知って笑顔。
人を欺くのはよくねぇことだが、これは笑いに繋がる過程でさあよ。
起承転結の抑揚が心地いいとは思わねぇか。
あっしだけだよそんな下衆、ってんなら今すぐにでも腹かっさばいて野垂れ死んでやらぁ。


髪を荊棘に振り乱しては
今日も宴と困惑の園


暗ぇ話はよしとくな。
当分な。


Tuesday, September 12, 2006

私の苛立ちの理由

人を信じると言うことは絶大な体力と精神力を必要とするものですが、
人を許すということもまた、人間にとっては難しいものであります。

他の者を意味もなく誹謗中傷するというのは、人間特有の奇妙な行動な訳ですが、それに何の意味もないとなれば、それ程奇怪なことはありません。
面白いならば、どれだけ他人を傷つけようが構わないという考え方。
己の笑いのためならば、他を無差別に殺害しても構わないという、卑劣な考え方。
己が満足するためならば、他の家庭や人権、名誉を破壊しても構わないと言う考え方。
私は少々寂しく感じます。
「そういう空気」だから許されるのでしょうか?
「勢いづいてしまった」から許されるのでしょうか?

私、自虐的な笑いと言うものを推奨する人間でありますが故に、民衆を無差別に虐殺する、鉄槌を喰らわすような笑いに、どうしても拒絶反応を起こしてしまいます。
うっかり他人を傷つけるようなジョークを放ってしまったときは、すかさず己にそれ以上の刃を向けることにしています。
他人の注目がその人に止まり、皆がその誹謗中傷に情報操作される前に、己をどん底まで落とすのです。
それが罪滅ぼしになるとは思ってはおりませんが、少しでも醜い情報操作を緩和することができるのであれば…と反省の意を込めて、己の喉に弾丸を詰め込むのです。

最近、自分の両親のことを中傷されることが頻繁にあります。
その場では笑いに変わります。
なぜなら私が空気を読んでいるから。
私の両親を誹謗中傷した人間のその醜い言葉を、私が許し、面白可笑しく誇張して追加発言をし、自虐しているのです。
しかしながら、本当は悲しいし、悔しく思ったりもします。
両親にはやはり幸せになって欲しいと思っておりますし、ましてや私と同年齢の若造達に中傷されてほしくもないわけです。
ましてや私の家庭の事情を何も知らない人間が、憶測のみで断定的な発言をし、周りの何も知らない人間に刷り込み教育を行うのです。
私の両親の負のレッテルは私の知らない場所や、デマのみで形成されていくのです。
そうして偽りの人間像がそこに完成するに至るのです。

「気にしなければいい」と仰る方や、「冗談なんだからいいじゃないか」と仰る方もいます。
いいのか悪いのかは私が決める問題です。
中傷されているのはあんたじゃない。俺だ。
と、急にそこで私がぶちギレて、中傷発言を行った人間を撲殺したとします。
恐らく世間では、私が悪いということになるでしょう。
しかしながら、私はそのことを「私がやりすぎました。すいませんでした。」と反省することはまず考えにくい。
私を中傷するならばまだしも、両親を侮辱し、揚げ句「お前の母親は惨めだな。あっはっはー。」と私の自宅前で大声で叫ぶ。
その後、電話越しの母親は泣いていました。
私に謝っていました。
追い打ちをかけるように、その誹謗中傷を断行したテロリストは携帯電話のメールや口頭で、私の母親を中傷する発言を絨毯爆撃のように友人達に発信し続けました。
そのメールの内容は無秩序極まりないものであり、「皆さんに一斉送信しております。加藤の母親は○○○。」
(※○○○はとても書くことがおぞましくなるような内容です。)
と言ったような事を幾度となく繰り返し続けました。

このBlogを読んでいる弁護士の方がいらっしゃったら、是非メールをお寄せ下さい。
訴訟を考えております。