冤罪裁判
『痴漢行為』
皆さんはしたことがありますか?
いやいや、私はしたことありませんよ。いや、ホント。
ホントだって。
突然なんでこんな話題を持ちかけるのかと、私を疑いの目で見ることと存じ上げます。
今朝、いつものように通勤電車に揺られながら、悩み相談の文庫本を読みふけり、
耳に取り付けたイヤーホンからは、周囲の迷惑にならない程度の音量でBAUHAUSのヘレヘレのナンバーを黙々と、時にニタニタと聴いていると、十三の駅に着くやいなや、
「ただ今、車内でトラブルが発生したため、もうしばらくお待ち下さい。」
とのアナウンスがイヤーホンから流れるBAUHAUS越しに聞こえてきたのです。
私は冷静に辺りを見回し、時に巫山戯た男子高校生に
「貴様を見てるんとちゃうんやから、こっちを見るな。童貞が。」と一瞥をくれていると、
突然大声で喚きだしたのは30歳前後と思しきご婦人。
「あんたが触ったんやろ!頭おかしいんちゃうか!」なんて。
最近の駅のホームでは、賑やかに「全国ソフトタッチの会」が開かれているのか。
戦後の日本にも様々な会合や集会が発生しているものですな。
私の中で『会』と付くものなんて「大政翼賛会」と「鳥や爬虫類と戯れる会」くらいしかなかったもので、突然の駅でのこの出来事に、瞬時に頭の中が対応していきませぬよ。
しかしながら、そのご婦人の怒り狂い、今にも核のスウィッチでも押してしまいそうな鬼の形相をみていると、どうやらただ事ではない様子。
ひょっとして、遂に米軍がイランにでも侵攻したのかしらと不安に陥ってしまいました。
私は心配になりイヤーホンを外し、書物を鞄の中へとしまうと、その群衆へと耳を傾けました。
女性が1名、駅員が2名、列車の中の人間になにやらお話をしている様子。
時折女性の「はぁ!?」とか「なんなん、この人!」と言うようなヒステリー気味な声が聞こえてくるだけで、他の会話が何一つ聞こえてきません。
ん〜、これは困った。
話の趣旨が見えなければ、私が急にお面を被り、薄手の布きれをマントのように見立て、
ポンポンポンポンポンポ〜ン♪何て鼓の音色と共に
「ひと〜つ人世の生血を啜り、ふた〜つ不埒な悪行三昧、みっつ醜い浮世の鬼…」と、
桃太郎侍風に参上つかまつって、その群衆に飛び込んでいき刀を振り回したとしても
「ちょっとちょっとオッチャン、収録中なんやから邪魔せんといてくれるかな。ぼけ。」と叱責され、挙げ句の果てに人権を剥奪されてしまうかもしれない。
その時私は『空気の読めない土民』と化してしまいます。
とその時、私の周りにいた学生らしき女性が
「痴漢ちゃう?うっとーしーなぁ」と、その友人等とくっちゃべっていたのでありました。
ほう。痴漢。
その線か。
私がその女学生の大きな声で「あの騒ぎは痴漢騒ぎ」と気付かされるのと同時に、
その他の乗客等も「痴漢騒ぎが勃発した」と先入観を抱くのでした。
辺り一面は痴漢における罪の重さの話や、正しいヒップの触り方、どこからが痴漢行為か、痴漢屋と言われる商売をVシネマで見たことがある等々、
様々な憶測や話題が飛び交って、それはもう聞いているのもウンザリするほどの一大痴漢ムーヴメント。
みんなどうかしているぞ。
Vシネマを日本の縮図やと思っていては、世界はなかなか広がらないぞ。
そうして、駅員に引っ張られ、ようやく車内から男が出てきたのですが、
これまた30歳過ぎくらいのスーツを身に纏ったサラリーマン風の男。
体格はラガーマンのようなゴツイ風体。
しきりに男は「やってない」を連発しているところから察するに、やはり痴漢での揉め事だったのでしょう。
男は涙を浮かべ悲しいような、又対する女性に明らかに敵意を剥き出しにした怒りの眼差しで、
必死に弁論をしていました。
「こんなブサイクのん、誰が触るか!ボケェ!」
「自意識過剰なんじゃ!死ね!」
「うっさい!ボケ!殺すぞ!」
と言ったような、とてもお上品な言葉で女性をひたすら罵倒。
テレビドラマや小説などでは、こういった場合の男子は
「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」がセオリーなのですが、
このラガーマン風の男は刀を地面に置くどころか、完全に抜いてぶんぶん振り回しておった訳です。
一歩も怯まず、立ち向かっていたわけですね。
そうして電車も出発し、私は窓の外を眺めながら、その痴漢行為のことについていろいろと考えていました。
もし、その痴漢行為が冤罪であったならば…。
痴漢行為全般に言えることなのですが、痴漢が起きた瞬間、女性がまず騒ぎます(堪える人もいますが)。
それを見た我々は、まず真っ先に痴漢行為があったのではないかという憶測を立てる。
痴漢行為そのものに、男子と女子どちらに非があるかと言えば、紛れもなく男子。
そうして何の疑いも無しに、我々はその男子に畜生のレッテルを貼る。
その被害者、加害者共に、自分の知り合いでないことの方が多いと思われます。
もしもその行為が冤罪であったとしても、私やその刹那にしか顔を見ることがないような群衆の中に於いて、そんなことを知る由はありません。
群衆の中での彼は生涯痴漢の罪を背負って生きていくこととなるのです。
そうなると加害者である彼の社会的地位は崩壊し、嫁や子供にも逃げられ、職は失い、親からすらも勘当。
街を歩けば、他人の目が気になって気になってしょうがない。
夜になれば、悪夢と緊張感でおちおち寝ていられない状態が続き、
揚げ句精神科へ通うも、すぐに金がなくなり闇金へ手を出し始める。
それを機にヤクザ風情のゴツイあんちゃん共から追っかけ回され、どつき回され、
結局何もなくなった彼は、橋の下での生活を余儀なくされる。
そんな時に出会った浮浪者歴30年のベテラン、ショウさん(66)に出会いブルーシートでの共同生活が始まる。
「俺、昔さぁ自動車産業で有名なト○タで働いてたのよ」
「ショウさんてエリートなんすね。でも僕もマイ○ロソフトで勤めてたんすよ。」
「あぁ、あの世界一の金持ちのビルなんとかがやってる」
「そうっす。でも変な出来事が切っ掛けで退社を促されちゃって…」
「なんだ、横領でもやらかしたのか。イヒヒ。」
「違うんすよ。痴漢の疑いかけられちゃって。」
「痴漢て電車ん中でか?おめぇそんなことしちゃいかんよ。」
「ち、違うんすって。冤罪っすよ。僕はやってない。でも裁判とかになっちゃって会社のみんなも僕を白い目で見るようになっちゃて…。なんだか居づらくて。」
「そうか、おめぇもか…」
「え?じゃあショウさんも…?」
「ああ、俺の場合は自分の男性器を女性に擦りつける型だがな。他人様のを触る型じゃない」
「…」
「…」
「…やったんすか?」
「やった」
「…ダメじゃないすか。」
「ダメだ」
「僕のは冤罪の話なんすけど…」
「俺のは執行猶予がついた話だ。」
「別ですよねぇ」
「別だ」
「耐えられないんで出て行きます」
と言う風な話が繰り広げられ、彼は没していきます。
それが冤罪であるにもかかわらず、彼は社会的に死ぬのです。
何もしていない彼は、自殺をすることでしょう。
上に記したような例は、
「冤罪によって廃人化したケース」でありまして、その他にもあるように思えます。
例えば「冤罪によって凶暴化するケース」と言うのもあるように思います。
痴漢の罪に問われ、警察で度重なる尋問を受け続け、100日以上にも渡る拘置所生活。
彼は冤罪であることを訴え続け、家族も駅などでのビラ配りに奔走するわけです。
尋問にもひたすら耐え、無罪を主張し続けました。
これは冤罪だ。あの女を連れてこい、と喚き散らし警察の心証も最悪。
そうして外に出てきた頃には、会社もクビになり、怒りの矛先は『罪を着せた女』にのみ向かって、
拘置所をでたその足で、サバイバルショップに行きバタフライナイフを購入。
そして女を探しだし、自宅へ戻ってくるのを待ち伏せ強姦の揚げ句にズタズタに切り刻み殺害する。
それでも気が治まらない男は、女の死体を家族へと送りつけるのです。
『お前等が全て悪いのだ』というメッセージを添えて。
と言うのが2つ目のケース。
今朝の一件の場合は後者、『凶暴化のケース』の弱い感じのような気がしてなりません。
ボロカスに罵倒をし続ける男と女の姿は、見るに堪えられないほど醜いものでした。
しかし被害者の彼女の視点から考えてみると(私は男なので本質とまではいかないかもしれませんが)、
『この人は本当に触った。少なくとも私はそう感じた。』という感情か
『こいつを痴漢に祭り上げて、金でも分捕ってやろう。』という感情のどちらかが見え隠れしているように思えます。
先に断っておきたいのですが、私は痴漢をする男は最低だと思っております。
男女差別的な考え方は全くないのですが、区別することは必要であると考えておるのです。
なので、上のような女性の見解は、逆に痴女が現れたとしたときの男性側の見解でもあると言うことです。
痴女が電車内で現れて、叫び散らす男も少ないとは思いますが、痴女が蔓延する社会にいずれなっていった場合、男性の我々でも、そのような感覚になる人間はいる、ということなのです。
本当の男女平等化社会を私も目指している一人であることを忘れないで頂きたいと思います。
なので、電車に女性専用車両があるように、男性専用車両というのも作ってください。
私は一生乗りません。
冤罪とは何一つ利益を生みません。
寧ろ、悲しみを生み出すケースの方が多いのです。
過去に何かの罪を犯した人間は、尚更疑いを持たれることが多いように思えます。
「お前過去に窃盗で捕まっとるやないか。どうせ痴漢もやったんやろ。」
と言った感じでしょうか。
一つ一つの事象として捉えてはもらえないのです。
自分自身の道につけた窪みや傷は、後からついてくるものにとっては障害でしかないのです。
障害と言うよりも『目障りなモノ』とでも言いましょうか。
『罪は冤罪を生み、冤罪は新たな罪を生む』
疑わしきは罰せず、と言うのが日本の法の精神。
冤罪は疑いをかけられている段階であるにしても、社会的には罰せられているのも同然。
生きて屍となるその様を、我々は眺め軽蔑し、嘲笑の後に目の当たりにするのは人間の尊厳と死。
感覚として疑わないことを徹底するというのは難しいと思いますが、
疑ってしまった自分に非がないかを自分に問いかけてみるのも大事だと思います。
今朝のあの男性はあのあとどうなったのでしょうか。
一つアドバイスができるとするならば、まず真っ先に自分の身分証明をすることです。
免許証なり保険証なりを提示し、何があっても駅員事務所などには行かないことです。
「用件があるなら後日連絡を下さい」と伝え、その場を後にするのです。
事務所に行くことは法的には拘束となるので、身分証明後に断ったにも関わらず連れて行かれたとするならば、違法行為なのです。
その時点で裁判では確実に勝利なのですが、もし事務所に行ってしまったのならば、当番弁護士を頼むことです。初回は無料ですから。
このスキルを身につけ、準備をし電車に乗りましょう。
危険予知という点では大事な要素ですよ。
では、明日の通勤に備え、六法全書でも読んで寝ます。
舐めるなよ。
1 Comments:
女性専用車両。
できるだけこれに乗るようにしています。
痴漢が・・というのではなく、やっぱり専用の車両をわざわざ用意して頂いているのに、普通の車両に乗っていると「こいつ、あっちに行ったらええのに」と思われているのではないかと思ったりもします。混んでいれば特に。
なんだか男性に失礼な気もしたのがきっかけで乗るようにしています。
おかしいのかな!?
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